私たちの健康にとってとても大切な呼吸。
実は、呼吸には様々な筋肉が働くことによってなされており、解剖学や運動学では「呼吸筋」といわれて分類されています。
理学療法士でかつ、呼吸リハビリの現場に10年以上携わっていた私が、「呼吸の筋活動」をできる限り簡単にお伝えします。
呼吸筋の主役「横隔膜」
まず、呼吸の主な筋として有名なのが下に示す、横隔膜です。
肋骨の下側の縁にドーム型に付いていて、肺とお腹を遮るように膜状になった筋肉です。
この横隔膜が呼吸筋の主役になります。
横隔膜
(解剖学アプリ アトラスより)
これを模式的に見たのが下の赤い図です。
左側が息を吐いている図(呼気)
右側が息を吸うときの図(吸気)
(呼気):横隔膜が緩み、上方に上がる。胸部は縮み、肺は小さくしぼみます。
(吸気):横隔膜が収縮し、下方に上がる。胸部は広がり、肺は膨らみます。
肋骨が広がることで、肺に空気が入る
ここで、呼吸の筋活動を理解する上で、理解しておいて欲しいことがあります。
それが、胸腔内は「陰圧(いんあつ)」ということです。
因みに胸腔(きょうくう)というのは肺が入っている空間のことです。
お腹では腹腔(ふっくう)といい、ここの空間には胃や肝臓などの内臓が入っています。
私たちの身の回りで「陰圧」と言えば、「注射器」がイメージしやすいと思います。
注射器はピストンを引くことで容器に水が入ってきます。
採血の時、看護師さんがピストンを引いていくことで、血液が注射器の中に取り込まれるのを見たことがあると思います。
これは注射器の容器の中が陰圧であるということを意味します。
つまり、、、、
ピストンを引く ⇒ 水が注射器に入る。
これを呼吸に置き換えると・・・
ピストン(横隔膜)を引く ➡ 肺の中に空気が入る
というメカニズムになっています。
そしてそれを示したのがこの上の図になります。
つまり、肺という容器(注射器)の中に空気を入れるためには横隔膜という名のピストンを下に引く必要があるわけです。
そして、実はこの横隔膜のピストンを有効に下に引くためには、左図に示しているように肋骨の下部が左右に開く必要があります。
通常、息を吸って肺が膨らみ、肋骨が広がるように思いがちですが、実は逆なんですね。
なおここで言う、横隔膜を引くためにも実は肋骨が広がるということが大切になります。
肋骨(ろっこつ)が広がる ➡ 横隔膜が下がる ➡ 肺の中に空気が入る
というのが、より正しい順番になります。
尚、この肋骨を広げるために活動するのが肋間筋(ろっかんきん)といって、私たちの肋骨の骨の間についています。
外肋間筋(がいろっかんきん)
(解剖学アプリ アトラスより)
尚、余談ですが焼肉でおなじみの「ハラミ」は牛の横隔膜のことで、「カルビ」はあばら骨のことなので、この肋間筋がカルビに相当します。
骨付きカルビの骨はまさしくあばら骨(肋骨)に相当します。
他にも沢山ある呼吸筋
次に横隔膜以外の呼吸筋について解説していきます。
この図をみると分かるように、実は呼吸筋というのは様々な筋肉があり、大きくわけて、2つに分類されます。
そして、図で示しているように赤字が主に吸う時の筋肉=吸気筋
青字が吐く時に必要な筋肉=呼気筋になります。
そして、この筋肉や、吸気筋、呼気筋を理解するためには、呼吸筋の2つの活動パターンと合わせて覚えることでより理解できると思いますので、以下にまとめてみました。
呼吸の2つのパターン
実は呼吸には2つのパターンがあります。
それは「安静時呼吸」と「強制(努力)呼吸」です。
「安静時呼吸」は何も考えることなく、普通にしている時の自然な呼吸です。
一方「強制(努力)呼吸」は、運動してより身体に沢山の酸素が必要な時や、息苦しい時など、呼吸に努力が必要な状態のときの呼吸だと思うと理解しやすいでしょう。
そして実はこの2つのパターンにより、活動する筋肉も異なります。
【安静呼吸】
吸気:横隔膜、外肋骨筋、内肋骨筋
呼気:ほとんど関与していない。上記の筋が吸った後に弛緩(リラックス)することで呼気になる
【強制(努力呼吸】
吸気:横隔膜、外肋骨筋、内肋骨筋
+
胸鎖乳突筋、肩甲挙筋、斜角筋、僧帽筋、肋骨挙筋、大・小胸筋、脊柱起立筋が参加
呼気:内肋間筋後部、腹筋群、腹横筋、胸横筋、肋下筋などが参加
なんとなく筋肉の名前ばかりで分かりにくいですよね。
当然ながら筋肉の名前は覚える必要はないのですが、努力呼吸の方が沢山の筋肉が活動するということと、頸部周囲にある胸鎖乳突筋、肩甲挙筋、僧帽筋、斜角筋、といった筋肉が活動しているということを理解して頂けたらと思います。
そして、普段の安静呼吸では働かないのに、努力呼吸の時に、呼吸を補助するように働く筋肉のことを呼吸補助筋(こきゅうほじょきん)といいます。この呼吸補助筋の名前は覚える必要はありませんが、この呼吸補助筋の活動を理解することは臨床的意義があります。そのことを次に解説します。
主な呼吸補助筋
胸鎖乳突筋
肩甲挙筋
僧帽筋
斜角筋
(解剖学アプリ アトラスより)
呼吸補助筋の臨床的意義
さて、呼吸には安静時呼吸と努力呼吸というのがあり、努力呼吸をする際は、安静の呼吸の働きをさらに助けるために呼吸補助筋というのが、呼吸に参加するということをお伝えしました。
上記にその呼吸補助筋の一部を紹介しましたが、筋肉の名前を覚える必要はありません。
しかし、その部位はそれとなく知っておくと役に立ちます。
まず、呼吸器の疾患(喘息や肺気腫)において、通常の呼吸では酸素が十分に取り込めない場合、この呼吸補助筋が非常に活動します。
呼吸リハビリの現場では、この呼吸補助筋の活動の有無によって、ある程度の呼吸状態を把握したりします。
つまり、呼吸補助筋の活動が活発 ➡ 息苦しい ➡ 肺の状態が良くない
呼吸補助筋の活動がないor少ない ➡ 息が楽 ➡ 肺の状態が落ち着いている。
というように、肺、呼吸の状態を把握するのに役立ちます。
また、この呼吸補助筋の緊張を見ることは、呼吸リハビリの現場以外でも参考になる場合があります。
例えば、肩こりや、背中の痛みを訴える方が、私のサロンのお客様や、整形外科の患者さんには多くいらっしゃいます。
その場合、そもそも、通常の安楽な呼吸がうまくできていない場合、これらの呼吸補助筋が緊張している場合があります。
あるいは、肉体労働や、不良姿勢での長時間のパソコン、スマホの使用によりこれらの筋肉が無意識に緊張してしまっているケースなどです。
この場合、これらの呼吸補助筋の緊張を抑え、リラクックスさせるために施術をする場合もありますが、同時にいかにして安楽な呼吸、本来の呼吸ができるようになるかを考えて、施術や運動療法を考えていきます。
実は、私たちが思っている以上に、現代人は理想的な呼吸ができておらず、不要な呼吸補助筋の緊張を作ってしまっているケースが多いのです。
特に現代人は肋骨が十分に動かない、浅い呼吸をしている方が非常に多く、五十肩をはじめ、肩こり、腰痛のある方でも呼吸が浅いと感じるケースがよくあります。
実はそのような場合、私は肩や腰だけではなく、呼吸からアプローチをしたりすることがあり、その方がかえって根本的解決に至りやすいということを多く経験しています。
ということで、呼吸は単純に私たちの体内に酸素を取り入れ、二酸化炭素を排出するだけでなく、非常に重要な役割を果たしているということがお分かりいただけたかと思います。
まとめ
・呼吸の主役は横隔膜(ハラミ)
・胸腔内は陰圧であり、肋骨が広がり、横隔膜が下がることで息を吸うことができる
・呼吸には安静時呼吸と強制(努力)呼吸がある
・強制(努力)呼吸の際には、呼吸補助筋が働き、呼吸を助ける
・呼吸補助筋の緊張は肩や背中が緊張している目安となる
・肩コリや腰痛の人ほど、呼吸補助筋が緊張し、浅い呼吸になっている場合がある
・肩コリや腰痛の根本的な解決のために、呼吸へのアプローチが重要な場合がある
非常に簡単ではありますが、呼吸の筋活動について解説させていただきました。
最後までお読み頂きありがとうございました。
尚、ここに解説したのは基本的な呼吸筋のお話で、より理想的な呼吸な呼吸の詳細についてはコチラの記事で解説しています。
参考にしていただければ幸いです。
尚、その他呼吸に関する動画を下記のようにYouTubeにもアップしています。
参考になれば幸いです。
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